不動産相続に必要な手続きの流れ

不動産を相続する際に必要な手続きの全体的な流れを解説します。

相続人と相続財産を確定する

被相続人(亡くなった人)が遺言書を残している場合は、基本的に遺言書の内容によって相続人と相続割合が決まります。

被相続人が遺言書を残していない場合は、相続人と相続財産の確認が必要です。

遺言書を確認する

遺言書には、大きく分けて、自らが手書きで書く「自筆証書遺言」と、公証役場の公証人が作成する「公正証書遺言」があります。

自筆証書遺言は、書斎の引き出しや仏壇の引き出しなど自宅で保管されていることがほとんどです。

もし自宅で見つからない場合は、被相続人の友人や弁護士・税理士など生前に親交があった人に確認しましょう。

公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されているため、相続人が照会の請求をすれば存在の有無を確認でき、謄本を請求することが可能です。

相続人を確認する

被相続人が遺言書を残していない場合は、民法に従って法定相続人を確定させる必要があります。

法定相続人になれるのは、配偶者および被相続人の血族で、以下のように相続の優先順位と法定相続分が決められています。

【相続順位】

被相続人の配偶者 常に相続人
第1順位 被相続人の子
子がいない場合は直系卑属(子や孫など)
第2順位 被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位 被相続人の兄弟姉妹
兄弟姉妹がいない場合は甥や姪

【法定相続分】

法定相続人 法定相続分
配偶者のみ 1
配偶者と子 配偶者1/2
子(子が2人以上のときは全員で)1/2
配偶者と直系尊属 配偶者2/3
直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4
兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

参照元:国税庁|相続人の範囲と法定相続分

相続財産を確認する

不動産だけでなく、被相続人の遺産分割の対象となるものをすべてリストアップして調査します。

預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産も確認しましょう。

相続人の確認ができたら、遺産分割の対象となる相続財産を確認します。

【相続財産の例】

プラスの財産 不動産、現金、預貯金、株式などの有価証券、自動車や船舶
宝石や美術品など
マイナスの財産 住宅ローンや自動車ローン、保証人になっている場合の債務
未納の税金など

遺産分割協議で分け方を決定する

相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産の分割方法や割合を決定します。

遺産分割協議で相続人全員が合意したら、内容をまとめて「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書は遺言書がない場合の相続手続きには必要になる書類のため、相続人全員が合意したら、早めに作成しましょう。

遺産分割協議書には書式の指定はありませんが、一般的には相続人全員の署名・実印での捺印が必要です。

不動産の分割方法

不動産を複数人で相続する場合は、現金のように単純に分割できないため、工夫が必要になります。

複数人で相続した不動産の分割方法は、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」と大きく分けて4つです。

どのような不動産か、どのように分配したいかで取るべき方法が異なります。

【分割方法の概要】

分割方法 概要
現物分割 ・不動産をそのままの形で相続して物理的に分ける方法

・1つの不動産を1人の相続人だけで相続するときや広い土地を分筆して分けるときなどに使われる

代償分割 ・特定の相続人が分割できない財産を相続する場合に、他の相続人に代償金などを支払って調整する方法

・現金や預貯金などの相続財産が少なく不動産が相続財産の割合の多くを占めるときなどに使われる

換価分割 ・相続した不動産を売却して得られた売却金を相続人の間で分配する方法

・相続した不動産に相続人の誰も住まず活用もしないときなどに使われる

共有分割 ・相続した不動産を複数の相続人で共有して相続する方法

・共有以外の分割方法が困難な状況であるときなどに使われる

不動産における相続税の評価方法

相続した不動産における相続税の評価方法は、土地と建物で異なります。

土地の場合は土地区分によって計算方法が異なり、主に市街地では「路線価方式」、人口の少ない地方や畑などは「倍率方式」が使われます。

建物は、市町村が決定する固定資産税評価額で計算するのが一般的です。

【評価対象と概要】

評価対象 概要
土地
(路線価方式)
・路線価とは道路に設定されている1㎡あたりの価格のことで、路線価×地積×補正率で計算される

・路線価は国税庁のホームページで確認できる

参照元:国税庁|財産評価基準書

土地
(倍率方式)
・市町村が決定する固定資産税評価額に決められた倍率を掛けて計算される

・倍率表は国税庁のホームページで確認できる

参照元:国税庁|令和6年分 財産評価基準書 福岡県 (評価倍率表)

建物 ・市町村が決定する固定資産税評価額が相続時の不動産評価額となる

・固定資産税評価額は固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書を確認するか、役所から発行してもらえる固定資産評価証明書で確認できる